河井孝仁のシティプロモーション日記とか

行政広報の評価について ―広報しまだに寄せて- 広報会議2012年12月号

 広報評価には2つの側面があります。一つは、広報のための仕組みやコンテンツがどれほど効果的なものになっているかを検討する戦略評価、もうひとつは、実際に成果をあげたのかを確認する実績評価です。行政広報に限らず、そのいずれについても広報の評価は簡単ではないと思っています。

 先日、静岡県島田市を訪問し、意見交換を行いました。島田市の行政広報をどのように評価できるかを考えるための打合せです。今後も、島田市で行政広報を担う皆さんとは議論していくつもりですが、その第一回としての取り組みです。

 まず、行政広報にとって最も重要な媒体である広報紙、島田市では「広報しまだ」、その8月号、なかでも特集ページを確認しました。行政広報紙の特集ページは多くの場合「政策広報」のために使われています。政策広報は、行政サービスのお知らせというより、地域での課題や可能性を示して、市民の関心を惹き、課題解決やビジョン推進への参画を得るために行われます。市民が選びだしたた首長が、その負託をもとにして今後の自治体運営・地域運営の方向性を明確にし、改めて評価を受ける場でもあります。

 広報しまだ8月号の特集は「資源ごみの分別」です。島田市の広報担当者はこの特集のターゲットを、経済観念のある主婦層として位置づけていました。主婦がごみの分別に強く関与していることに注目したターゲティングだと評価できます。また、多くの主婦が支出の管理を中心として家計を采配しているとの前提に立てば、経済観念への着目も理解できます。

 広報を戦略的に評価する、広報の実績を評価するには、4つのポイントがあると考えています。①費用対効果(コストパフォーマンス)、②対象者の行動変容、③協働の充実、④関わった人々の成長の4点です。
それぞれについての詳しい説明は、別に改めて行いたいと思います。ここでは2点目の対象者の行動変容について考えていきます。対象者の行動変容については、AISASと呼ばれる(株)電通が登録している考え方があります。認知→関心→探索→実行→共有の流れです。

 しかし、認知→関心→探索→実行→共有という行動変容が、自然のうちに対象者に起きるわけではありません。そうした動きを促進するためのメディア活用が効果的に行われているかを評価するためのモデルが必要です。そこで、(L)AISLA+Sというメディア活用戦略モデルが意義を持ちます。(傾聴)・認知獲得→関心惹起→探索誘導→着地点整備→実行促進+情報共有支援のための各メディア活用が、全体的な戦略として的確かの評価を行うためのモデルです。

 このモデルを活用して広報しまだの資源ごみ分別特集を確認していきました。島田市では広報紙は全戸配布が前提となっています。大都市では新聞折り込みや新聞広告として広報紙を発行しているところもありますが、それに比べて島田市などの全戸配布方式は認知獲得にとって有効な手段と言うことができます。

 次に十分な関心惹起が行われているかを検討しました。対象者の関心を惹くためには、伝えられた内容を対象者が「自分ごと」と考えることが必要になります。この点で、広報しまだ資源ごみ分別特集は十分に考えられた内容となっています。特集の見出しは「一億円のリサイクル」。経済観念のある主婦層というターゲットに響く見出しになっています。日常のごみ分別が一億円という巨額な金額につながる、このギャップが、日常のごみ分別を担っている主婦には大きな意味を持つと考えられます。また、数字を十分に用いた3つの表は経済観念に長けた主婦への説得力を持ちます。

 広報しまだは多くの広報コンクールで表彰されています。2012年にも公益社団法人日本広報協会が主催する全国広報コンクールで読売新聞賞を受賞しました。対象者の関心惹起を可能とする、この記事にもそうしたコンテンツ制作力が発揮されています。

 関心を惹いた次のフェイズで必要になるのは探索誘導のためのメディア活用が求められます。広報しまだの特徴は、この探索誘導、さらに次のフェイズである着地点整備を、広報しまだ内で完結させようとするあり方です。
それが端的に表れた文があります。「次ページの 『ごみ減量のアイデア』などを参考に、今後も、ごみの減量と資源化にご協力をお願いします。」というものです。確かに「生ごみの7分の6は水分。よく搾れば、ごみが少なくなります。」などの記述が並んでいます。

 一方で関連した内容が書かれているはずの、市の公式ウェブサイトへ導く文章はありません。また、チラシや関連イベントなどの他の媒体への言及も行われていません。こうしたあり方は多くの自治体の広報紙にも共通します。もちろん、対象者の手を無駄に煩わさず、一回で伝えられることはそこで完結させるという考え方は十分に意義があります。しかし、さらに追加の情報が欲しいという対象者のウォンツを刺激し、次の行動を促すことも、地域の課題解決への積極的な参画を促し、そうした人々を見える化するためには意味を持ちます。

 このことは先ほど述べた着地点整備というメディア活用にも関わってきます。着地点整備は関心を惹起した内容について、その詳細を説明する場所を用意するという作業です。公式サイトなどの信頼性のある「場所」と、そこで書かれた内容を裏打ちし発展させるソーシャルメディアなどの「場所」が連携していることが望ましいと考えられます。

 広報しまだ資源ごみ分別特集では、優れた文章表現を駆使することで、広報紙記事で十分な内容を伝え、あわせて自治会長と環境衛生自治推進協会会長の2名に分別の重要性を語ってもらうことで、市が伝える内容の裏打ち・発展を的確に行っています。

 ただ、さらに望むなら、ウェブサイトを用いることでより多くの発展が可能になるでしょう。またイベントなどをソーシャルな着地点とすることで参加者相互の意見交換による裏打ち、発展が期待されます。あるいは、島田市内で市も関わって発行しているフリーペーパーや、コミュニティFMであるFMしまだがそれぞれの視点で、広報紙の内容を裏打ちし、発展できれば、資源ごみ分別を契機にした市民参画が行われやすくなるはずです。

 そうした多様な関係者が関わることで、行動促進=市民のごみ分別を促すこともより行いやすくなります。グループによるごみ減量を見える化し、優秀者を表彰するコンクールなどのゲーミフィケーションの取り組みへの発展も可能になるでしょう。

 情報共有支援のためのメディア活用も同様です。特集記事内には記事に書かれた内容について市民からの意見を募る記述はありません。また市民によるツイートを促すような仕組みの工夫も見あたりません。

 これらは、従来、自治体の広報担当者の仕事だとは考えられてきませんでした。確かに、広報担当の仕事と言うよりごみ問題を扱う環境課の担う部分は多いと考えられます。ただし、だからといって「無理ですね」で終わらせるのではもったいない。広報課が広報紙製作をする課にとどまらず、多くの事業課をコーディネートし、それぞれの広報課題に応じたプロデュースを行う、そうした仕事が、十分な力を持った島田市広報課には期待されると考えます。
  1. 2013/04/04(木) 10:28:04|
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河井孝仁

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