河井孝仁のシティプロモーション日記とか

社会情報学会

社会情報学会研究発表大会の初日。

まず、東日本大震災関連WSを聴講。
震災後のメディアを利用度・有用度・信用度で評価する調査が興味深かった。
私からは詳細な経過時期と情報種別のマトリックスに落としこむことで、研究の意義が高まるのてはないかとコメント。
また、信用度と信頼度について、震災以前に持っていた信用度・信頼度の蓄積が、震災時でのメディア活用に大きな違いを与えるとの確認については「情報信頼のプール」といった概念を考えられないかとも発言した。
自分自身あまり考えていなかったが発見として面白いかな。

次に、基調シンポジウム第1部(実証)を聴講。
旧知のMRI村上さんのオープンデータ、オープンガバメントの発表はデータオリエンテッドに政策形成や施策実施を行うことの意義と課題。これを逆に市民からの視点で考えると、今、なんとなくイメージしてるポータブルガバメント(ガバナンス)につながると思う。このあたりはインターバルで村上さんと話した「それって『価格コム』ですよね」という議論には改めて示唆を得た。
村上さんの発表以外にも、決定支援についての研究や現場とモデルのスパイラルアップという話もそれぞれ関心が持てた。

会場換えての若手WSは申し訳ないが欠席し、宿舎へ。群馬大学から30分以上の往復^^;でなかなか遠い。

宿舎では、成績評価しただけで残してあった行政広報論の学生レポートへのコメント書きを行う。
シティプロモーションをテーマにしたこともあり、改めて自分にとっても勉強になる機会になった。学生諸君に感謝。

夜は近くの紋次郎なる居酒屋で食事。なんだかバタバタしている店だったが、地酒の群馬泉、船尾瀧のいずれも本醸造を飲む。船尾瀧は本醸造のわりに最初の飲み口が軽く、しはらくすると味が見えてくる。群馬泉は若干しっかりだが特徴はあまり感じなかった。

社会情報学会 第二日
最初は、私も共同研究者になっている福武亨氏の「東日本大震災における各新聞社のツイッター利用の差異」という発表をフォローし、質問やコメントに対応しました。「だからこうすべき」というより「こんなことがわかった」という研究ベースを提示する発表でしたが、その範疇としては的確にできたのではないかなと思います。茨城新聞、朝日新聞の社会部とコブク郎、ふらっと河北の各アカウントをデータに基づき、一方通行・双方向/被災地向け・その他向けでポジショニングしてみたものです。

同じセッションでの滝川惟氏「ソーシャルメディア上における仲介促進要因の検証」は、コネクタに注目したとっても面白い内容でした。人はなぜコネクタになるのか、そのインセンティブ設計というもの。私からは構造的空隙に係るネットワーク論に加え、経営学や組織論からの知見も参考になるのではとコメントしてみました。

同じく同セッションでの石原裕貴氏「震災時におけるTwitterネットワーク分析」は、次数中心性や媒介中心性の分析から、震災時に情報ハブとなるアカウントがあったことをデータに基づき提示したもの。今後はハブとなるアカウントがどのような要素を持っているかを分析したいと述べていました。おそらく、どのような要素を持っているかは多様であり、いろいろな流路から流れ込んでくるんだと思います。そのうえで一定の閾値を超えるとハブになるのではないかと。であれば、これも昨日考えた「情報信頼性プール」という概念につながりそうな気がします。

社会情報学会理論系シンポジウムで遠藤薫先生が発表された内容はとても興味深く、ところどころでは「おぉ」と声が漏れてしまいました。
勝手にまとめれば、chromeの初音ミクを用いたコマーシャル動画を幕開けに、 メディア史時代区分について、ベンヤミンのそれが、マクルーハン、アドルノと比較して「情報」を「モノ」という視点からも述べていることに言及します。
そこから「情報化」という概念がモノを軽視していたのではないかと指摘し、モノノケという言葉などからも モノに存在する「霊性」のようなものを オーディエンスに喚起します。この喚起はモノがコトを生み、コトがモノを生む再帰性への確認及び、 小松和彦の憑霊論や、タルド、ベンヤミンのモナド論を援用すること によっても行われていました。また、モノを単体でとらえるのではなく「配置」によって意味を持ちうるとの指摘もされていました。このあたりは、私がずっと考えている「編集」にもつながる内容だと勝手に解釈しました。遠藤先生は、さらに、こうしたことが初音ミク現象でのN次創作にもつながることを述べます。
あわせて、モノが「マナ」として精神性を持つことを改めて確認したうえで、芸術の持つ力として、マナの顕現や結晶化によって、いわば世界の創出が行われることを指摘します。そのうえで一回性にもとづく超絶的なアウラ(オーラ)を生成する「すごい」芸術を期待できなくなった現在において、「模倣」もまた生産であるという確認をされました。おそらくここでの「模倣」とは単なるコピーではなくMADのようなものが考えられていると思います。
それによって、複製技術時代以降の芸術(テクネー)が存在可能であり、超絶性に基づかない、むしろ脱権威化したアウラBが生まれると述べられました。
ここで再び初音ミクについて言及します。初音ミクのLAライブでのアウラ、Perfumeの自己ホログラムとの共演に見るアウラが、まさにそのアウラBであると指摘します。そして、これらを基礎に、超絶的オリジナリティの連続生成などというものが不可能になった現在、従来の発想での「進歩」というものが期待できなくなった社会においても、人間が希望をもって生きることが可能であることについて語り、発表を終えられました。
私にとっては鳥肌ものの内容であり、初音ミク、Perfume、ベンヤミン、小松和彦を(いずれも私が気になっているものですが)を配置・編集するテクネーとしての見事さを感じる発表でした。

ところで、遠藤先生が初音ミクやPerfumeについて述べた、著作権の一部をフリーにすることで多様な他者からのコミットメントを誘いこむというのは、前から言ってるヴァルネラビリティ(攻撃誘発性)の持つ価値だよなあと再確認しました。頑なに強くなろうとするんじゃなく、柔らかに意図的に弱さを見せる意義がそこにあると。

ウエルカムパーティで、東京情報大学の河野先生、樋口さん、サイバーエージェントの片岡さんと話しながら、SNSアカウントを登録すると、SNS上での自分本人の情報受発信を学習する自分botが自動的に設定され、本人がSNSから暫く離脱したときに、botであると明らかにしつつ、代わりにそれらしい情報発信をすると共に、興味のありそうな情報を収集して本人復帰時に知らせるというのは面白くないかなと思いました。
これは発表の中で、SNS疲れやSNS漬けが否定的に語られる一方で、SNSを利用したセルフブランディングの可能性が語られていたことに触発されたものです。

社会情報学会。第三日(最終日)。
午前に「東日本大震災における域外避難者への情報保障」の発表をしました。
現状の域外避難者への情報保障の不十分さをヒアリングを中心にした調査に基づき指摘したうえで、その補完に、タブレット端末をメディアとして、政府・自治体情報を各市民個々にターゲティングし、アンビエントな形で提供するポータブルカバメント、さらにそれらの情報をソーシャルに裏打ちすることを含めたポータブルガバナンスの可能性があるんじゃないかと話してみました。
面白がってくれる質問やコメントもいただき、元気をもらいました。ありがとうございます。

私の発表と同セッションでの三浦大樹さん『ソーシャルサーチの活用に関する分析』は面白かった。
パーソナライズド・ソーシャルサーチによって、一般的な検索とは異なる親和性や属性に応じた、その人にとって有用な検索結果を提示する。これもポータブルガバナンスとかに関わりそう。

昼休みには若手の皆さんと一緒に学食へ。情報信頼性のプールという発想を援用して、リツイートされやすい発言を****で発見する仕組み、さらにそれを*******と関連させた研究をデータオリエンテッドでできないかとか議論してみた(一部墨塗り^^;)。

午後は私が座長を務めるセッション。
水野義之さん『福島原発事故後の放射線情報可視化における自己決定権の課題』がピカイチ。
確かに時系列や危機の深度、地域格差などにマトリックスさせて、より詳細な議論が必要だろうが、私が考えてる「リスク選択を支援する広報」という研究課題にとって重要な研究だと思うし、必須引用です。
この内容をツイートしたところ、個人の受容度みたいなこともふまえることが大事だよねと言うリプもらいました。おっしゃるとおり。

今年の社会情報学会は多くの刺激を得られてよかったですなぁ。
  1. 2012/09/18(火) 10:15:47|
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河井孝仁

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