河井孝仁のシティプロモーション日記とか

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福岡市のシティプロモーションを支えるもの-『広報会議』2012年8月号

 先日、福岡市を訪れました。福岡市は積極的なシティプロモーションを行っているまちの一つとして著名です。その内容を詳しく確認することが訪問の目的でした。

 シティプロモーションとは、地域を持続的に発展させるために地域の魅力を発掘し、地域内外に効果的に訴求し、それにより、人材、物財、資金、情報などの資源を地域内部で活用可能としていくことと定義することができます。

 残念ながら、福岡市役所でシティプロモーションを担われている職員との方からのヒアリングは、前々日に起きた市職員の飲酒のうえでの不祥事への対応が急遽必要になったこともあり、短時間で終わってしまいました。しかし、そこで聞くことができた骨子に加え、福岡市役所ロビーを「体験」できたことは大きな意義があったと思います。

 ロビーを「体験」するとは、どのような意味でしょうか。福岡市役所1階ロビーは4月27日にリニューアルされました。そこで設けられた多様な「しくみ」はまさに体験の言葉がふさわしい印象を持っていると考えます。

 まず、ロビーの中央部の床は10メートル四方ほどの大きさの福岡市の航空写真になっています。私が訪れたときに、子どもたちや高齢の方が写真の上を何かを探すように歩いたり、外国人がガイドに写真の一画を示されながら話していました。その様子は、地域の内にいる人、外にいる人、両者を地域の発見に誘いこむ場所になっているように見えました。

 次に、週末など休日にも住民票などの交付を受けられる情報コーナーがあります。この情報コーナーを訪れるのは福岡市民がほとんどになるでしょう。そうした福岡市民に地域の実情や可能性をいつのまにか知らせることができる秀逸なスペースデザインが用意されています。

 行政や関係団体、あるいは地域のNPOなどからはさまざまなチラシや情報誌などが発行されています。情報コーナーにはそうしたチラシが十分に整理され、カテゴリ分けされて備えられています。多くの自治体でなぜ、このチラシが隣りあっているのか理解できない配置がされているのとは異なり、編集という印象さえ感じられる構成は、福岡市の今を的確に認識できるものとなっています。開架された多くの報告書も手に取りやすく、せっかく作られながら死蔵されがちな成果物が活用される可能性を意識させられました。

 ロビーの南側には大型のデジタルサイネージ(電子看板)がロビーの壁と一体化して設置されています。コンテンツも一方的な映像を流すものではなく、その場にいる人々と連動した双方向な映像が流れていました。

 私が見ていたときにもお母さん、お父さんと幼児が自分たちの顔が映ったり、動いたり、自分自身の姿が地域の魅力を示す映像のなかに埋め込まれたりする様子を遊びながら楽しんでいました。市役所のロビーという場所を介して、地域のなかの私たちというものを「自分ごと化」するしくみになっていると感じられる情景でした。

 デジタルサイネージからほど近い場所にはポスターやチラシが配架された一画があります。佐賀、長崎、大分、熊本、宮崎、鹿児島、沖縄。そう、九州を紹介するコーナーです。福岡市が福岡市だけで自立するのではなく、九州という地域の主要なプレイヤーとして自らを意識し、その連携のなかで魅力を訴求する姿勢と自負が表れている場所です。市民にとっても九州という地域のなかでの自らを感じることが可能になるでしょうし、地域外から来た人々にとっても福岡市の「懐の深さ」を訴求するコーナーになっています。

 しかし、市役所に地域外の人が来るのでしょうか。そのしかけも用意されています。まず、九州情報コーナーのすぐそばには、市内を案内する観光ボランティアの方がいらっしゃいます。私も1時間ほどのまち歩きツアーに参加しました。

 ボランティアの方に伺うと、どんたくや山笠などの祭りをきっかけに地域への愛着を持ち、それを公民館などでの学習で深め、そうした思いを観光ボランティアとして発揮する出口を持ったことが楽しいとおっしゃっていました。このお話は、地域の魅力を訴求する人々を発見し、育てるしくみにもつながるものとしての観光ボランティアを認識させられるものともなりました。

 地域外の人々を誘いこむしかけは、観光ボランティアだけではありません。市内3コースを観光できる2階建てで屋根のないオープントップバスのチケット売り場が市役所ロビーに置かれ、発着も市役所前に用意されています。ここでチケットを販売している担当者の方は市職員ではありません。バスを運行する西日本鉄道株式会社グループの方です。公共交通を担い、福岡市も金銭的支援を行っているとはいえ、民間事業者の社員が市役所のロビーでチケット販売をしていることにはちょっと驚きました。

 オープントップバスにも実際に乗車してみました。新たに採用されたというバスアナが地域の魅力や市民のホスピタリティを述べる案内はとても心地よいものでした。福岡市内にある魅力が十分に訴求できていなかったという課題解決を図る事業とのこと。十分な可能性を持っていると思う乗車体験でした。

 市役所ロビーという場所を、福岡市役所という組織にとどめない縦横な連携の結び目として活用し、地域魅力を地域内外に訴求するシティプロモーションの一つのしくみとして位置づけている、そうした多様な取り組みを「体験」することができたと思っています。

 こうした積極的なシティプロモーションを行っている福岡市は広報戦略室という組織を持っていますが、詳細に文章化された戦略計画を有しているわけではありません。このことについて、広報戦略室の方は、「私も文章としての『戦略』を構築することが役割になるのではないかと考えたが、実際には、個々の事業を市役所の信頼向上と市のブランドイメージ確立という目的に明確に位置づけながら進捗させていくことが、仕事として期待されるものであった。」とおっしゃっていました。

 ここには重要なことが語られています。往々にして、「広報には戦略が必要だ」、「シティプロモーションは戦略が前提となる」と述べると、文章としての戦略を作ることに汲々としてしまいがちです。けれど、実は、戦略とは目的とその実現のためのロジックモデルの明確化であることを理解すれば、必ずしも文章としての戦略が必要なわけではありません。

 戦略の文章化は、目的にとっての各施策の不断の位置づけを容易にするために行われるものです。むしろ文章がないからこそ、緊張感を持って施策の位置づけを日常的に行うことができるというのであれば、文章化にかける時間や人手を省略できることは積極的に評価できるでしょう。ただし、そのためには職員の高い意識と能力、それを保障、支援する組織の力が求められます。

 この文章の冒頭に記したように、福岡市担当者の方とのヒアリングが短時間で終わったのは職員の飲酒不祥事が理由です。市長はそれに対し職員への自宅外での飲酒自粛要請という荒療治をとりました。シティプロモーションを成功させる前提となる市役所内部のインナーコミュニケーションをどのように確立していくのか。福岡市であれば十分に解決できると期待しています。

(2012年6月4日元原稿記載)
  1. 2012/09/03(月) 13:45:20|
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河井孝仁

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