河井孝仁のシティプロモーション日記とか

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新しい生活者消費行動モデルSIPSと地域広報-『広報会議』2011年7月号

 今年1月、新しい生活消費行動モデルであるSIPSが、サトナオ・オープン・ラボによって発表されました(注)。サトナオ・オープン・ラボは、広告の現場を基礎にしつつ、理論的な発信も積極的に行う専門家である佐藤尚之氏が主宰していたヴァーチャル組織であり、その後、電通モダン・コミュニケーション・ラボに発展しました。
 そのサトナオ・オープン・ラボが提起したSIPSとは共感(Sympathize)→確認(Identify)→参加(Participate)→共有・拡散(Share & Spread)の頭文字をとった、ソーシャルメディア時代の消費行動モデルです。従来、電通が提唱し、商標登録を行っているAISASという消費行動モデルは維持しつつ、ソーシャルメディアの視点からのアプローチを重視して提起されました。

 この新しい消費行動モデルと地域広報はどのような関係にあるでしょうか。地域広報の意味を、地域の魅力を地域内外に訴求することと捉え、その目的を地域に生きる人々の幸せを築く多様な資源の獲得と考えたとき、SIPSというモデルと地域広報は無関係なものではあり得ません。

 いや、twitterやfacebook、mixiなどに代表されるソーシャルメディアと地域とは必ずしも相性がいいわけではないと考えられるでしょうか。ソーシャルメディアが地域とは関わらないつながりを基礎とするのであれば、地域広報とは異なるものだと考えられるでしょうか。インターネットを活用するソーシャルメディアはまだまだインターネットを縦横には活用していない人もいる地域とは無関係なものとして考えられるでしょうか。

 ソーシャルメディアをtwitterやfacebook、mixiをイメージして把握するのではなく、個々の単語の意味に戻って考えてみてはどうでしょうか。ソーシャルを「人々の関係」と、メディアを「媒介するもの」として理解してみます。そのときにソーシャルメディアは「一方的ではない、人々の相互関係に基づき生み出される意味・情報を伝えるもの」として把握できます。そうであれば、まさに地域という関係性のなかで生み出される意味・情報を訴求する地域広報をSIPSという新しい行動モデルで改めて見直してみることの有効性は明らかだと思います。また、生活者側の視点にとどまらない、広報する側の視点でSIPSを意識することで、自らの行うべきことの確認も可能となるでしょう。

 SIPSは共感(Sympathize)から始まります。その共感をどのように生み出すのか。地域という視座から思いをめぐらしたときに辿りつくものに「物語」があります。地域の魅力を、地域で紡がれてきた、新たに紡いでいく物語によって裏打ちすることが共感を生み出していきます。その物語が地域という狭い領域で紡がれることによって地域のステークホルダーの多くがそこに関与することが可能になります。「私たちの場所」としての地域を共感によって築くことがまず行われなければなりません。

 あるいはこの物語の表象形として地域キャラクターを発案することもできるでしょう。地域キャラクターを作れば地域が元気になるというほど、単純なものでないことは明らかです。そのキャラクターのなかに地域の物語が仕込まれている、そうした物語に地域の多くの人の関与を埋め込んでいく、それによって共感をいざなうことが求められます。SIPSという行動モデルを参照軸と考えれば、そのような発想が求められるはずです。

 しかし、地域という物語に共感したとして、即座により生きやすい地域の形成に参加するほど、現在の生活者はナイーブではありません。人々は、その物語が、その物語を基礎づける一々が確かなものか、自分にとって意味をもつものか、情報を探索し、確認(Identify)を行います。

 ここで、行政のもつ意味、求められる行動が明らかとなります。行政は地域の人々の選択を得た首長の指揮統率のもとで行われるものです。いわば、一般的な正統性をもつことが可能な組織です。その組織が確認可能な基礎となる情報を提示する。それがSIPSの次の段階に生活者を上らせることができます。逆に言えば、行政が確認可能な基礎となる情報を提示せず、イメージや、経緯を隠して結論だけを提示したとき、人々は共感によって上りかけたステップから、一斉に降りていくことになります。

 もうひとつ、確認可能な基礎となる情報を提供するために有効な方法があります。協働という手法です。正統性を持った行政であっても、必ずしもすべての分野に高い専門性を持つわけではありません。また、行政が一般的な正統性を持つゆえに公平性の罠にはまることも避けられません。公平性の罠とはターゲットすべき対象がいるにも関わらず、みんなに公平に対応しなければならない、対応してしまうという状況です。このとき、行政が専門性や迅速性に優れた、言い方を換えれば公平性に囚われないNPOや企業と協働することで、生活者それぞれに併せた、確認可能な有益な情報提供が可能となります。

 共感をいざなった物語を多様に基礎づける情報を、行政の正統性によって、あるいは協働という手法によって多彩に提供することで、生活者の確認の欲求に答えることが、地域広報には欠かせないことが理解できると思います。

 SIPSの次のステップは参加(Participate)です。サトナオ・オープン・ラボは、この参加の意味を幅広く考えています。軽い気持ちで「いいね!」というボタンを押すことから、新事業案を提案することまでも含めています。地域広報をSIPSから捉えるのであれば、この考え方を尊重したいと思います。インターネット上で「いいね!」と言ってもらうことから政策提案まで様々な参加が行われることが地域広報が求める次の目標になります。

 この参加に向けて、どのようなことが必要でしょうか。ここで重要なものに誘発性(ヴァルネラビリティ)という言葉があります。ヴァルネラビリティは「欠けている、不全であるがゆえに、それを満たそうとする他からの入力を誘いこむ」という意味を持ちます。

 先に述べた地域キャラクターなどには明らかですが、どこか「つっこみどころ」を持っているゆえに人気を博すという事例は少なくありません。「いいね!」と言うことのできる場所を用意するということもまた「穴」を空けておくということです。政策提案も、行政が自らだけでは地域を経営できないことを提示したうえで参加を求めるものでなければならないでしょう。

 SIPS以前の一方的な訴求であれば、自らの充実を見せつけることが重要だったかもしれません。しかし、人々を誘い込み、そのつながりによって情報を伝達されるものとしてのソーシャルメディアの視点を持つとき、広報する側のヴァルネラビリティへの意識は必須だと言えるでしょう。人々が「欠けた」部分を充填しようと自らの力を信じて参加し、そこから新たな情報を生みだし、地域の魅力をともに築いていく。それが可能になれば地域広報の目標は半ばまで実現できたと言えるでしょう。

 ここまで、SIPSモデルを基礎に地域広報に必要な要素を考えてきました。紙幅の関係で、次のステップである共有・拡散(Share & Spread)には触れられませんでしたが、また機会を作って展開できればと考えています。

SIPSモデル(電通モダン・コミュニケーション・ラボ)の地域広報への援用として



  1. 2011/08/01(月) 06:22:25|
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