河井孝仁のシティプロモーション日記とか

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地域の魅力を創造するサイクル-『広報会議』2011年4月号

 シティプロモーションの「プロモーション」という言葉を端的に説明すれば、商品を顧客に的確に訴求し、購入に結びつけることを意味します。商品が用意されていることがプロモーションの前提となります。商品開発があり、そのうえでプロモーションするという流れです。もちろん、プロモーションの結果を評価し、商品の改良が行われることもあり得ます。商品開発もプロダクトアウトと呼ばれる「開発側の条件に基づき作りたいものを作る」という発想から、顧客のニーズを分析し、対応した商品を開発するマーケットインの重要性が語られて久しいものがあります。プロモーションが「いいもの作ったんだから売ってくれ」と言われ行われるものではなくなっていることは確かです。商品開発とプロモーションが相互に影響し合いながら進むことは必須な状況になっています。

 では、シティプロモーションにとっての商品開発とは何でしょう。シティプロモーションは地域のイメージを構造化あるいはブランド化し、地域内外に訴求し、地域への愛着、訪問、定住を獲得する「しごと」です。

 地域とは単なる地理的広がりではありません。そこには人が住み、学び、働いている。そう考えるなら、地域そのものを多様な関心による連携(コミュニティ)による構造として考えることができます。それぞれのコミュニティが他のコミュニティを発見し、連携することでつながりが生まれ、地域という構造が可能になります。地域を構造として、イメージとして「商品開発」し、シティプロモーションをしていくことがどのように可能なのか。筆者の考える地域魅力創造サイクルを例示します。

 地域魅力創造サイクルとは、「発散」→「確認」→「集約・編集」→「正統化」→「発散」→……、という持続する運動です。「発散」→「確認」は現場を中心とし、「集約・編集」→「正統化」は主に(仮想的な意味を含めての)会議室で行われます。地域魅力を創造するという“事件”は、現場でも会議室でも起きています。
 
地域魅力創造サイクル

 個々の段階について述べます。「発散」とは、地域を形づくる様々なコミュニティが、地域の魅力を現場で意識し、次々と具体的に提示することを意味します。このときに重要なことが具体性にこだわることです。「住みやすい」とか「美しい」、「自然が豊か」とまとめず、「○○という場所から見た△△川の流れが陽の光に照らされていてキラキラと輝いていた」「駅から歩いて5分の場所に□□という公園があり、子どもと高齢者が一緒にいられる」「◇◇というNPOが虐待防止を真剣に行い、保護された子どもが元気になった」「アニメの背景になった場所に若者たちが集まり、楽しそうに掃除をしている」等々。これらは会議室だけでは出てこないはずです。現場を経験する、現場を歩く。それによってはじめて「発散」が可能になります。発見するだけではなく、それを発散する。つまり発見した情報を多様に発信することが基礎になります。発散される場所はワークショップでも、インターネットを利用しても構わないでしょう。

 次の「確認」とは、発散の段階で提示された地域の魅力を、他のコミュニティが、その現場に赴き確認することをいいます。ある関心をともにする連携にとって地域の魅力であると提示されたものが、別の関心を基礎にした連携によっても魅力として捉えられるのか。思いこみなどの傾向はないのか、別の側面からの魅力があるのではないか、などを確認する作業が求められます。発散の時ももちろんですが、この確認の段階でも気をつけることとして、否定するのではなく、別の視点や視座を提示することに心懸けることがあります。「それは違う」ではなく「この発見は尊重する。そのうえで、私は別の視点でこう考える」という、視点を重ねていくことが重要でしょう。

 このようにして発散され、別の視点で豊富化された地域の魅力を、構造化し、あるいはイメージとしてまとめあげる次のステップが「集約・編集」です。世界に一つしかない圧倒的な魅力を持った素材がある地域でも、その地域には多様な暮らしがありコミュニティがあるはずです。そうしたものを含めて地域の魅力として構造化し、イメージ化することが求められます。ましてや、秀でたものは多彩にあるが、世界一は難しいという多くの地域にとっては、シティプロモーションを的確に行うためにも必須の段階となります。

 「集約・編集」は発散され、確認された魅力の組み合わせ方、何を採り、何を保留するのか、魅力を並列的に示す足し算ではなく、それぞれの共通要素を引き出しつつ、イメージとして定着させる掛け算の作業です。回遊性を持たせたり、あえてギャップを作ることで関心を呼び起こしたり、物語を意識したり。ここでは、様々な議論を「会議室」で真摯に、それぞれの編集力を競いながら行う必要があります。多様な意味での「デザイン」について造詣の深いプロフェッショナルに支援を得ることも有意義だと考えます。

 宇都宮市の「住めば愉快だ宇都宮」というコピーと、親しみやすいロゴは、そうした集約・編集の成功事例だと考えます。こうした集約・編集作業は、発散→確認というステップが前提になっているということを忘れてはいけません。発散→確認というステップは地域に暮らす人々の納得や成長を図るステップにもなっています。なんとなく地域イメージについてロゴを募集する、と言うようなことが行われても、そのロゴは定着できません。

 また、コピーやロゴだけが集約・編集のアウトプットではありません。さらに重要なアウトプットに戦略や施策があります。発散され、確認された地域魅力の素材をどのように組みあわせ、工程表を意識し、目的を達成するための戦略を形成するか。また、戦略に定められた、それぞれの施策を行っていく際にも、発散→確認された地域魅力をどのように組み合わせ提示していくのかが求められます。

 そのうえで「正統化」の作業が必要になります。現在の地域は行政が単独で経営するものでも、市民だけで成立しうるものでもありません。市民という主権者(プリンシパル)が、議会・行政、企業、NPOという代理人(エージェント)を活用して経営されるものが地域です。であれば、集約・編集の作業によって案出された地域イメージや戦略が、プリンシパルである市民は当然のこと、エージェントである議会・行政、企業、NPOによって認知され、賛同されることが必要です。この作業が十分に行われなければ、せっかく集約され、編集された結果が十分に受け入れられることなく終わってしまいます。具体的には、地域のステークホルダー、その代表者等により構成された機関によるオーソライズが求められるでしょう。

 地域魅力創造の流れをサイクルだと述べました。それは正統化された地域イメージや戦略を再び現場で試し、そこから新たな発散を生むことが持続的な地域魅力創造につながるからです。シティプロモーションに取り組むにあたって、この地域魅力創造サイクルによる「商品開発」を意識していくこと、それによって、はじめてシティプロモーションは成功すると考えています。地域魅力創造サイクルについては、個々の地域ブランド産品の創造サイクルとの重層性や創造サイクル自体をイベント化する意義など述べられなかったことも多くあります。また機会をつくって、御紹介しようと考えています。



  1. 2011/05/04(水) 09:14:42|
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