河井孝仁のシティプロモーション日記とか

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シティプロモーション -地域の人々の幸せのために--『広報会議』2011年3月号

 シティプロモーションを「地域の魅力を発掘し、地域内外に効果的に訴求し、それにより、人材、物財、資金、情報などの資源を地域内部で活用可能としていくこと」と定義したとき、それを実現するための目標には多様なものがある。

 例えば、Uターン・Iターンによる定住人口の拡大、二地域居住を前提とした季節居住者の増加、海外を含めた旅行者など交流人口の伸張、地域産品の積極的販売、居住者あるいは地域外に住む人の地域への愛着や帰属意識の涵養・強化などがあげられる。

 これらは、それぞれの地域特性に基づいて、地域を生活の基礎とする人々が持続的に活動し幸福を追求するための重要な手段であり、前提となる。

 つまり、それぞれの地域にはそれぞれのシティプロモーションがある。いわゆる先進事例を丸ごと模倣しようとしても、それは不可能だろう。では、読者が今回の特集から学ぶべきものは何か。それは戦略的発想の必要性である。

 いきあたりばったりに目立つことをするという態度をシティプロモーションとは呼ばない。各施策が、それぞれの地域の目的にどのように役立ち、機能するかという工程表、ロジックモデルを意識しなければ、成功に見えても一時的な成果しか生まない。

 シティプロモーションは持続的に行われなければならない。これは個々の施策を継続するべきだと述べているわけではない。必要に応じ施策を実施し、評価し、改善し、代替することが求められる。それによって人・モノ・金・情報を地域内部で活用するとの目的を実現していくことが求められる。

 そのためには、地域のおかれている状況を的確に調査分析する必要がある。闇夜で剣を振り回したところで得られる獲物は僅かしかない、あるいは全くの徒労に終わる。調査分析で得られた結果に基づき、戦略形成の責任者(多くは行政の長だろうが、これもまた地域の実情によって異なる)が、地域経営の多様なステークホルダーと連携しつつ、何を目標とするのかを明らかにする。そして、その目標を実現するための手順書を明確にし、それぞれを担う者を定置する。そうした行為を戦略形成と呼ぶ。

 シティプロモーションは戦略に基づいて行われなければならない。
 地域のブランド化も手段である。地域を基礎として生活する多様な人々の持続的幸福のないブランド化はあり得ない。ブランドは差別的な優位性を持つ存在を前提として、その評判を築き、持続的な信頼を勝ち取るところから生まれる。

 地域を基礎として生活する多様な人々の持続的幸福を考えるならば、ブランド化とは産品のブランド化に止まってはならない。地域そのものの生活をブランド化していく必要がある。

 このとき重視すべきことが先にも述べた地域特性という言葉にある。人々は各々の地域の特性・事情の中で、他の地域とは異なりつつ、しかし十分な幸福追求を可能とする「差別的優位性」に基づいた生活をする権利がある。そのうえで、その差部的優位性を的確に訴求し、評判形成を行うことで、地域内外に、その地域への「あこがれ」を生み出すことが求められる。さらに、そうした「差部的優位性」に基づいた生活を持続的に保つことで評判への信頼を裏打ちしていく。そこに生まれるのが地域のブランド化である。

 シティプロモーションとは単なる売り込みではない。地域のもつ「差別的優位性」を支える地域魅力の素材を発見する。その原石のような素材を発掘するためのきっかけを創る。発掘した原石を集め、磨き上げ、組み直し、ブランドにふさわしい地域として地域内外に訴求していく。それによって多様な資源を獲得し、地域を基礎として生活する人々の幸福追求を確保するための取り組みである。今号の特集で紹介された事例の多くがそのような過程を経ている。

 地域魅力の原石を発見するためには、地域文化や地域の置かれた環境への敬意が求められる。地元学という手法が用いられることもある。そのうえで、その原石を発掘しなければならない。発掘には多くの人の手が必要になる。地域の歴史、物語、優れた産品、人々の気概・優しさ。そういった魅力の原石はそのままでは「当たり前のもの」として見過ごされてしまう。そこに契機となる仕掛けを用意することが必要になる。

 マーケティングにプロダクトフローという考え方がある。「売りたい商品」を実際に購入してもらうためには、その前提として「あげる商品」に接してもらい「売れる商品」をリーズナブルに購入してもらうことが必要になるという発想である。人は一足飛びに、高価に見える商品に手を伸ばすことはない。ブランドとしての地域を訴求するためにもサンプルとしての「あげる商品」が必要になる。それが「契機となる仕掛け」である。

 近年、注目されている仕掛けに、地域キャラクターや新たなグルメ開発、フィルムコミッションやアニメを利用した「聖地巡礼」、さらに携帯電話などを用いた位置ゲーム等がある。地域への敬意を払いつつ、そのままでは訴求しにくい魅力を、これらの仕掛けによって注目を惹き、サンプルとして手に取らせる。そこでは、あえて驚きを生み出すギャップを設けることでメディアにとっての価値を高める手法や、地域内の回遊性を確保することで、地域の多くの魅力に気づかせる手法が工夫されることもある。

 このとき注意しなければならないのは、地域キャラクターの人気を高めることやグルメを売り込むことがシティプロモーションの目的ではないという点である。これらはあくまで、ブランドとしての地域の「サンプル」である。シティプロモーションの目的は地域によって異なるだろう。だが、定住人口の獲得や、地域への愛着・帰属意識の確保が目的であるならば、そうした売りたい商品を購入してもらうためのサンプルとして、地域への「あこがれ」を創出する手段として、それらの仕掛けが置かれていることに常に意識的でなければならない。

 あるいは、これらの仕掛けは、筆者が提起する、顧客の行動変容を促すためのAISLA+Sモデルの最初のA=attention(認知)獲得の手段として用意されたとも考えられる。その後にはI=interest(関心)惹起が必要になる。ただし、十分にターゲットを設定した認知獲得としてのサンプルは、そのまま関心を引き出すことにつながる。

 誰が読むのかわからない新聞での報道は、多くが認知獲得にとどまるため、改めて関心惹起の手段を用意しなくてはならない。しかし、雑誌などを的確に選択することで可能となる、食べることに関心のある層へのグルメ提示や、アニメに関心を持つ性別・年代への「聖地巡礼」提供は、認知獲得と関心惹起を連携させた施策として有効だろう。

 AISLA+Sモデルはこの後に、ブランドとしての地域の魅力を探索させやすくするS=search(探索)支援の施策、探索した人々が適切に地域の魅力に到達するためのL=landing(着地)先整備、着地した場所での A=action(実行・購入)をサポートする実行促進の施策を内容とする。また、各時点で、参加者・利用者から良い情報を発信、共有(S=share)させる仕組みの重要性も示している。これらについて事例を引きつつ具体的な紹介を行いたいところだが紙幅が尽きつつあるので、それは別に譲る。

 改めて述べる。シティプロモーションには各々の地域特性に応じて地域の魅力を発掘し、プロダクトフローやAISLA+Sなどのモデルを用いて的確にターゲットに訴求することが必要となる。このことによって地域へのあこがれを紡ぐものである。それを可能にするためには、十分な戦略的発想が求められる。シティプロモーションに取り組むには、常に「この施策が、どこに機能するのか」という視点を持って取り組むことが必要になる。

 地域を基礎として生きる人々の幸せを築く。そのために必要な地域のブランド化のために、シティプロモーションの重要性は明らかである。
  1. 2011/04/03(日) 21:52:18|
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