河井孝仁のシティプロモーション日記とか

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議会広報の現在-『広報会議』2011年2月号

 名古屋市での市長と市議会の対立は、議会解散請求の取り扱いについて選挙管理委員会まで巻き込みながら深刻化しています。本連載では行政が行う広報について多く述べてきましたが、今回は、地方自治での二元代表の一方であり、名古屋での突出した事例を含めて注目を集める地方議会が行う広報について考えてみましょう。

 地方議会自体も大きく変わろうとしています。議会のあり方を明確にする議会基本条例も北海道栗山町での制定をはじめとして次々に定められてきています。栗山町議会基本条例では、町民参加及び町民との連携を定める第4条で「議会は、重要な議案に対する各議員の態度を議会広報で公表する等、議員の活動に対して町民の評価が的確になされるよう情報の提供に努めるものとする。」と記しています。また、第15条は議会広報の充実そのものを規定する条文となっています。そこでは「議会は、町政に係る重要な情報を、議会独自の視点から、常に町民に対して周知するよう努めるものとする。」と議会独自の視点を強調したものとなっていることに注目したいと思います。

 このことは議会広報が、政治家としての議員個人の広報活動や、議会内の活動団体である会派の広報、もとより行政による広報とは異なる独自のものであることを表していると考えられます。

 この独自の視点が議会広報誌で具体的に現れている姿として、宮崎県高千穂町の議会広報誌の記事があげられます。2010年4月に発行された議会広報誌では、直前の議会についての紹介にとどまらず、1993年から発行時点までの、養護老人ホームときわ園にかかる、議員質疑と町の答弁を追跡して経過を明らかにしています。この検証記事・追跡記事は、議会が、議員個人や会派としてではなく、議会として、この問題にどのように取り組んできたかを、二元代表制を十分に意識しつつ明らかにするものとして重要だと考えます。

 しかし、市民にとって多くの議会広報誌は必ずしも身近なものではないと考えます。行政広報誌には日常生活に直接に関係する行政サービスの活用方法についての情報が掲載されています。議会広報にはそのような情報を期待することは困難です。

 このようななかで、鳥取県北栄町の議会広報誌のように市民の傍聴記を記載するものもあります。議会広報を一方的なものとせず、市民の参加を促すものとして意義のある試みであると考えます。

 議会広報への市民参加として特筆すべき方策に、秋田県羽後町での議会広報に係る市民アンケート、さらにアンケートによって導かれた個別意見と回答の議会広報紙への掲載があります。この取り組みのきっかけは、議会の総括質疑について、発言した議員の氏名を掲載すべきか否かが議会広報委員会で議論されたことにあります。その結果、議員だけで考えるのではなく、議会広報をはじめとする議会の活動について広く市民の意見を聞こうということになりました。2008年の広報委員会でアンケート項目を決め、調査対象世帯を町世帯の10分の1としました。2009年4月に行われたアンケートはすべての議員が手分けをして配布し、町民は返信用封筒に封入して回答しました。

 アンケート回答によって示された町民の意見は2009年7月には議会広報誌に掲載されました。「議会広報を読んでいますか」(いつも読んでいる69.8% 時々読んでいる26.5% ほとんど読まない3.7%)「議会広報のどの部分を読んでいますか」「質疑応答で質問議員名を記入していないことについて、どう思いますか」などの質問への回答比率だけではなく、多くの自由回答も、議会広報発行についての意見・要望、議会と議員に対する意見・要望として掲載されました。

 そこには「広報うご(行政広報誌)との合併、紙質などを検討し、経費の削減を」「デマや中傷などは控えてほしい」「町当局との考え方の違いがわかるよう、議論の内容を詳しく載せて欲しい」「互いの批判や悪口を止め、協調して欲しい」など多くの意見があります。

 こうした批判ともとれる意見が議会広報誌に掲載されることも興味深いですが、次号の2009年10月31日号から3号にわたって、こうした意見への回答が行われていることはさらに画期的です。先の意見・要望にはそれぞれ次のような回答が行われています。「町広報との合併は時期、ページ数からしても無理と考える。独立性を持って対応することの意義を理解していただきたい」「議会広報では、このようなこと(デマや中傷など)は行っていない」「質問(議員)と答弁(町当局)で対応しているが、よりはっきりわかるよう、さらに努力したい」「議会活動では全員協議するなど努力している」

 町民からの意見には議会ではなく行政が答えた方が望ましいものもあります。それらについては町長部局に意見を伝え、回答を依頼しました。

 この取り組みは、回答を広報委員会や町議会内部で活用するにとどめず、議会広報誌に掲載し、さらに議会としての対応について説明するという双方向のコミュニケーションを繰り返している点に大きな意義があります。

 市民が主権者となり、地域の人々の幸せのために、議会・行政、NPO、企業が代理人となって地域経営を行うという考え方からは、羽後町議会の行った取り組みは当然のものといえるでしょう。主権者と代理人の間に「情報の非対称性」が生まれることは、経営学のプリンシパル=エージェント理論からも明らかです。羽後町議会の取り組みは、主権者である市民の参加をきっかけとして、代理人の一つである議会が、自分たちを「見える化」し、情報の非対称性を縮減しようとする試みとして高く評価できると考えます。

 既に述べたように、現在の地方自治制度は首長と議会の二元代表制に基づいています。国家のように議院内閣制をとっているわけではありません。つまり、首長を支持する政党・会派が与党会派であり、支持しない政党・会派が野党会派となる構図とは異なった形になります。首長と議会とは相互に牽制し、時に協力しつつも緊張関係をもつ必要があります。このことが議員個人の広報活動や会派としての広報活動とは異なる、議会独自の広報活動が求められる理由になります。いわば、議会は議員・会派が活動するための、意思を持たない器ではなく、議会=We(私たち)として、地域経営のきわめて重要な代理人として自らの意思を明らかにする必要がある存在になります。

 今回は議会広報のうち、議会広報誌を中心に考えてみました。もちろん議会広報の手段は議会広報誌だけではありません。WEBページの活用や、CATV・インターネットなどを使った議会中継、議事録の公開。また、大きな意義を持つものに議会報告会があります。これは、議員が何人かチームとなって地域に出向いて議会活動の状況についての報告を行い、市民からの意見や提言も受けるというものです。一方的ではない双方向のコミュニケーションとして重要です。このとき、出席した議員が個々の政治信条や会派の考え方を示すのではなく、「議会」として報告することに注目する必要があります。

 一方で、こうした議会広報誌をはじめとした多様な議会広報に、十分に取り組んでいない地方自治体の議会があります。自らを議会=Weとして、地域経営の代理人として的確に働くということを考えれば、疎かにはできない議会広報にどのように取り組むのか、自治体議会が問われていると考えます。
  1. 2011/04/03(日) 21:44:30|
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河井孝仁

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