河井孝仁のシティプロモーション日記とか

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地方新聞の持つ役割-紀伊民報の取り組みから-『広報会議』2011年1月号

 今回は紀伊民報の取り組みについて紹介し、考察してみたいと思います。紀伊民報は、和歌山県田辺市を主な販売地域とし、日刊で3万8000部を発行する地方新聞です。地方新聞が購読者の減少などにより経営的に困難な状況にあると伝えられるなかで、紀伊民報はWebを基礎に興味深い取り組みを行っています。

 紀伊民報のWebサイトはニュースサイトAGARA、紀南情報サイトKiiLife、コミュニティサイトみかんが組み合わされてできています。AGARAは多くの新聞社が運営しているWebサイトと同様に地域のニュースを提供しています。スポーツニュースや、土地柄からか釣りニュースが一面にカテゴリーとして掲示され、「世界遺産 熊野」など、いくつかの特集記事も目をひきます。生活情報サイトKiiLifeは、紀南地域のグルメ、ビューティー、ファッション、ショップ、エンタメ、ホテル・お宿、お湯・温泉、住まいと不動産、くるまのカテゴリ別に地域の商店などの情報が掲載されています。コミュニティサイトみかんは、「み」んなの「か」わらば「ん」として、日記や掲示板、電子メールを組み合わせた地域SNSです。

 それぞれを考えれば、特に目新しいものはないかもしれません。ニュースサイトはほとんどの新聞社が持っています。地域に限定した生活情報サイトについても多様なポータルが存在しています。また、地域SNSは総務省が平成21年度重点施策とするなど推進したこともあり各地で立ち上げられています。

 紀伊民報の取り組みの特徴はその連携と外部への発展にあります。連携としては、ニュースサイトAGARAのサイト内検索にKiiLifeショップが対象となったり、KiiLifeの各カテゴリーへのリンクがあるなど、距離を持ちつつも緩やかにつながるあり方や、みかんのなかにKiiLifeショップのコミュニティを作成することなども挙げられます。KiiLifeショップのコミュニティでは、商店主と顧客のコミュニケーションが行われ、KiiLifeのショップページに、みかんからワンクリックで飛ぶこともできます。

 サイト間の連携としては、KiiSerchと名付けられた紀伊民報内検索にも注目できます。例えば「白浜」の語句でKiiSerchを行うと、AGARA記事からの白浜町でのイベント2つが冒頭に並び、次にAGARA記事から白浜に関する記事が掲示されます。AGARAから検索された記事の途中に、KiiLifeに参加し白浜町に所在している商業者のサイトが表示されます。AGARAの記事の後にはみかんブログからも情報が表示されています。

 紀伊民報が運営する3つのサイトの記事をただランダムに表示するのではなく、それぞれのカテゴリを意識して掲載されることで利便性を持つと共に、新たな気づきを生み出す構造になっています。

 さらに、3つのサイト間の連携にとどまらない、外部への発展が注目されます。会員限定サイトであるみかんのなかで書かれる日記を、誰もが閲覧でき、デザインもカスタマイズ可能なブログサイトにするサービスが提供されていることも外部への発展と考えられます。このような外部への発展として興味深いものに子育て応援サイトあがらキッズ♪タウンと、和歌山スポーツがあります。

 あがらキッズ♪タウンは子育て家族に役立つ地域情報を配信し、紀南を中心とした子育てを応援したい企業やお店を紹介するサイトとされています。ニュースサイトAGARAにも掲載された記事から子育てに役立つものをピックアップして「子育て情報一覧」として掲示しています。また、子育てに関連するKiiLifeショップからのお知らせを提示するとともに、ミルク用のお湯を提供してくれたり、幼児用・子ども用のイスのある「子育ておうえん店一覧」もピックアップしています。また、みかんにある子育てサイトを紹介し、みかん会員であれば、直接コミュニティに参加することも可能です。KiiLife内の子育てサポーターのブログへのリンクも用意されています。さらに、AGARAの持つ医療機関情報にもリンクし、小児科などの医院を検索することもできます。

 和歌山スポーツは、スポーツ愛好者のための交流・情報サイトとして、趣味のサークルから公式団体、会員制クラブまで無料で登録・利用できるサイトです。みかんの機能を利用して、それぞれのチームのページを開設し、チーム内の連絡や交流を行うとともに、ゲームや大会の告知、成績の紹介などを公開できます。

 このように、AGARA、KiiLife、みかんを組み合わせ、それを外部へ発展的に活用していくことに紀伊民報の取り組みの意義があります。しかし、こうした連携や外部への発展はWebサイトにはとどまりません。例えば、年末年始時期に飲食店などの期間限定コミュニティをみかんのなかで構築し、そこから出された情報を紀伊民報社が発刊するフリーペーパー「キーライフ・プラス」に反映させています。また、KiiLifeのショップ情報と連動した記事を紀伊民報本紙に週1回「みんみん瓦版」として掲載することも行われています。この「みんみん瓦版」の掲載によって、新たな顧客の誘導ができたとのブログ記事もありました。

 紀伊民報のこうした取り組みは地方新聞にとって重要な示唆を与えていると考えます。地方新聞がキーストーンとなって、地域内連携を果たしている姿です。新聞社自らが情報を発信するにとどまらず、ウェブを利用することで多彩に可能となった市民の情報発信を、新聞社が持つ編集力及び取材力、それに培われた信頼の力によって価値を付与していく姿が示されていると考えます。SNSやコミュニティサイトなどに蓄積されていく市民や商業者の情報発信が、地方新聞社の裏打ちによって、他とは差別化された流路、出口を持っている姿として考えることもできるでしょう。さらに、この出口が地域商店の広告サイトとなることで、経営的には困難になりがちなSNSやコミュニティサイトを収益的に持続させる仕組みになっていることも注目されます。

 地方紙は単に記事の配送者にとどまっていては新しい展開は望めないと考えます。紀伊民報は個別記事のデリバリーを行うにとどまらず、読者・市民とのやりとりを見える化しています。この見える化の仕組みが、地域の資源の豊富化につながっていきます。地方新聞が培ってきた地域のなかの信頼感が市民による多様な情報発信を呼び込むことにもつながっています。

 紀伊民報社に伺ったときに聞くことのできた「利用者の皆さんが自分たちのサイトを作っている。そのことが、いつのまにか紀伊民報が持つサイトのコンテンツを豊富化している。」という点は重要だと考えます。地域を、暮らしやすい、魅力ある場所にする「編集=情報の組み合わせによる価値向上」のための素材の集積が地域メディアとしての地方紙で行われていることに注目したいと考えます。

 市民はフルタイムに情報を発信し続けることは困難です。一方で地方新聞社にとってはプロフェッショナルとしてフルタイムに情報を発信し続けることが価値となります。紀伊民報の取り組みは、地方新聞が多様な知を掘り出し、市民による情報発信、さらには編集を促すことで、地域の持つ魅力を築いていく可能性を示したものとして考えることができるでしょう。
  1. 2011/03/06(日) 16:00:05|
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河井孝仁

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