河井孝仁のシティプロモーション日記とか

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顧客の行動変化を意識した転入促進の可能性 『広報会議』2010年11月号

 旭川市の近郊にある北海道東神楽町のWEBページには、2010年9月3日現在9つのバナーリンクが掲載されています。「新分譲地ひじり野ガーデン花都心」「宅地分譲販売中」「子育て応援サイトはなっぴぃ」「大雪霊園墓地販売中」「旭川空港にも近い東神楽工業団地」「心を結ぶ花のふるさと事業関連情報」「東神楽町で暮らしてみませんか 移住・定住情報」「ひがしかぐら観光協会発行ひがしかぐらガイドマップ」「東神楽お天気情報」です。これらのバナーにも見られるように、東神楽町は積極的な転入支援を行っています。宅地造成を行い、インフラの整備を進めてもいます。

 ところで、消費者の行動変容をモデル化したものに(株)電通が提起したAISAS(認知・関心・検索・実行・共有)があります。しかし、広報を行う人間にとってはAISASを「不知→認知→興味→検索→実行→共有」へと自動的に流れていく顧客行動として眺めていては何の意味もありません。それぞれの「→」を後押しするためどんな手段があるかという発想を持つ必要があります。

 最初の「不知→認知」の後押しには、マスコミへのパブリシティ等による広い認知獲得の手段があるでしょう、「認知→興味」の矢印である関心喚起を後押しするには、ターゲットを明確にした情報提供があります。フリーペーパーなど対象を明確化した媒体の活用は時に「不知→認知+興味」というように、認知と関心を一挙に獲得する場合もあり得ます。

 次に位置する「興味→検索」の矢印を後押しするためには、興味を持った顧客にURLや検索ワード、QRコードなどを提示することで検索への誘導を図ることが必要になります。しかし、インターネット利用を当然とする現在の顧客は、そのように用意された後押しに従って検索行動を行うだけではありません。自ら、積極的に検索サイトなどを用いて多様な情報獲得を図ろうとします。

 そのためAISASモデルでの「検索→実行」は、より適切には「検索(Search)→着地(Landing)→実行(Action)」という二段階に分かれると考えられます。つまりAISASモデルは、広報担当者としてはAISLASとして考えることがわかりやすいと思います。

 では、「検索→着地」の矢印を後押しするための作業とは何でしょうか。一つには、当初の目論見通りの場所に着地してもらう、SEOとよばれる検索結果の最適化があります。これによって、検索結果の上位に自らのWEBサイトを位置づけ、次の「A=実行」に結びつきやすい場所に着地させます。実はこのとき、二つの着地点が用意されることが望ましいと考えます。一つは信頼を形成するための着地点、もうひとつは信憑性を判断させるための着地点です。信頼を形成するための着地点とは、情報提供者が明確であるWEBサイトです。地域情報であれば、行政や観光協会などが提供するサイトがこれにあたります。

 しかし、現在の顧客はこうした出所のはっきりしたオフィシャルな情報だけでは、その情報内容を信憑性ありとは考えません。製品情報の口コミが掲載されている価格コムや楽天のレビューが重要視されていることがその証左にもなります。つまり、二つめの着地点として、既存利用者や関係者の口コミ等が掲載された場所、最近の言葉ではソーシャルなWEBサイトが必要になります。「検索→着地」という矢印を後押しするためには、信頼を形成するための着地点と信憑性を確認するための着地点、この二つの場所を的確に配備し、そこへ誘導することが必要になります。

 そのうえで、着地する二つの場所を適切に連携させ、情報内容の信頼及び信憑性を確保すること。それによって信用を作り出したWEBサイト上に、顧客が「実行」するための情報や仕組みを用意すること。こうした作業によって「着地→実行」の矢印を駆動させることが可能になります。

 AISASあるいはAISLASの次の段階である「実行→共有」の矢印を後押しするとは、既存購入(実行)者が情報を発信しやすくする、発信したくなる仕組みや場所を用意することを意味します。利用者の意見を述べる場を作ったり、意見や評価を述べることにインセンティブを与えることが求められます。ここで既存購入(実行)者が発信した情報が、二つめの信憑性を確認するための着地点として機能することにもなります。

 あらためて、東神楽町のWEBサイトを見直してみましょう。ここまで述べてきたAISASあるいはAISLASの視点で眺めたときに、先に紹介したバナー、バナーをクリックした先のWEBサイトが提供する情報内容は、それぞれに興味深く読むことができます。

 東神楽町は北海道内の多くの市町村が人口を減らすなかで人口増を果たしてきました。転入と転出の差である社会増が人口増加を支えてきました。どのような層が転入してくるのか、東神楽町での聞き取りによれば、仕事での定年を迎え退職金なども利用して自宅を新築する夫婦と、20代後半で結婚や出産をきっかけに転入してくる家族、この二つの層が目立つと言うことでした。

 後者の若い世代が興味・関心を持つのは子育てへの支援です。実際にも、東神楽町子育て支援センターには、小学校入学までに必要となる経費を計算して教えてほしいという問い合わせもあるそうです。旭川市や東川町など近隣の市町村にも同様の問い合わせをしているのかもしれません。

 であれば、不知から認知へのハードルを越えた顧客にとって、子育ての支援情報にアクセスしやすいことは重要な意味を持ちます。東神楽町が子育て情報を集積し「はなっぴぃ」という形で提供すること、かつ、その情報に着地するためのバナーを移住・定住情報に並べて掲げていることには大きな意味を持つと考えます。これによって、認知から興味へのステップを踏むことが可能になっています。

 また「はなっぴぃ」は検索に対しての着地点の整備にもつながっています。東神楽町での子育てについて検索すれば、十分に蓄積された情報、それも提供者が町という信頼を形成するための場所に着地することができます。また、顧客とは言えませんが、保育所の情報発信を担当する保育士からのソーシャルな情報も提供され、一定の着地点が用意されています。さらに望むのであれば、せっかく構築された子育てSNSでのすべての情報を登録者だけに閉じてしまうのはなく、差し支えない一部を外部にもあふれ出させることが信憑性を判断するための着地点として有効に機能すると考えます。

 こうして、転入者の大きな層を占める子育て世代、子育てを控えた世代の関心を確保し、適切な着地点を作り、それをバナーを並べることにも見られる横展開によって「移住・定住情報」に誘導し、アクセスや施設などの周辺情報や相談窓口を明確にすることで実行=転居へのハードルを低くするという工夫が行われています。

 ターゲットを定めた転入者確保にとって、インフラを含めた施策の充実は当然です。しかし、それだけではない、顧客の行動変化に注目した、それぞれのステップの後押しをする広報活動の必要性が東神楽町の事例からも伺えると考えます。
  1. 2010/12/30(木) 19:42:02|
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河井孝仁

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