河井孝仁のシティプロモーション日記とか

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防災広報施設の課題と可能性 『広報会議』2010年7月号

 全国に130か所以上、防災体験ができる施設があります。最近では3Dの体感シアターなどまで整備され、ほとんどが無料で観覧できることもあって、多くの見学者を得ています。

 例えば、兵庫県姫路市にある、ひめじ防災プラザは2007年4月に開館し、初年度には想定を上回る3万3000人が来場しました。訪れた人々は、映像にあわせて振動する椅子に座り、201インチの大型スクリーンに展開される災害の臨場感あふれる恐ろしさを体験できます。また、地震被害にあった街が再現され、切れて垂れ下がった電線など、多くの危険を現実的に感じることもできます。

 しかし、充実した設備や熱心なスタッフを持っていても、こうした関心を持続的に得ていくことは容易ではありません。主な見学者として想定されることの多い小学生については、学校の社会見学の一環として行われることが期待できます。一定の学年で行われる社会見学は見学者が毎年入れ替わることで継続した来訪が行われます。一方、開館当初に積極的に見学に来る地域の自主防災組織などは、基本的には大きな変化のない展示や映像コンテンツではリピーターとして呼び込むには力不足となります。先に挙げたひめじ防災プラザの入場者数についても2009年度には2万人を下回ってしまいました。

 宇都宮市にある栃木県防災館は、地震体験・煙体験・大風体験・大雨体験などが可能な施設です。やはり、見学者が減少していくなかで、2009年度から財団法人栃木県消防協会を指定管理者としての管理運営が行われることになりました。

 栃木県防災館は、市役所前にあるひめじ防災プラザとは異なり、公共交通機関で訪れるには不便な場所にあります。その意味では一般市民が来訪して見学するというより、団体による防災学習を主なターゲットとして施設運営を行う必要があります。指定管理者となった栃木県消防協会では、展示をあらためるとともに、従来は休館にしていた月曜日についても、団体の訪問が期待できることへの考慮からか開館することとしました。さらに、従来は学校への働きかけにとどまっていた来館促進について、自治会や消防団などにも積極的に見学を促すことで新たな見学者を獲得しています。

 こうした試みとは異なったアプローチにチャレンジしている防災広報施設に札幌市民防災センターがあります。施設内容としては札幌市民防災センターも、ひめじ防災プラザと同様に3Dシアターや、地震体験・消火体験・煙避難体験・救急体験を備えた無料施設です。

 そうしたなかで、札幌市民防災センターはこの6年間、来館者数が6万人前後を維持しています。ひめじ防災プラザや、指定管理導入以前の栃木県防災館が来館者数を減らしていったことと比べ、明らかな違いを見せています。

 この理由に、来館者ターゲットの相違があると考えます。札幌市民防災センターにおいても、市内の子どもたちや防災組織は重要な顧客です。それに加えて札幌市民防災センターが進めている来館に向けての広報に『じゃらん』や『ウォーカー』など旅行雑誌への施設紹介の掲載や、観光業者への情報提供があります。その際には、それぞれの購読者層に応じて家族向け、カップル向けの内容を押し出すことを心懸けてもいます。また、中国語、韓国語、英語の外国語パンフレットを2010年4月から大幅に増刷しています。

 つまり、札幌市消防局は札幌市民防災センターを防災学習の場にとどめず、観光施設として位置づけていることになります。特に気候の厳しい北海道の冬においては、無料で楽しめる屋内施設としての訴求を強く行っています。実際にも、雑誌に掲載された時期には来館者数が増えています。

 こうした動きには本末転倒との意見もあり得ると考えます。防災PR施設は住民の防災意識啓発のために設置されているにもかかわらず、地域外からの観光客をターゲットにすることは目的を逸脱した「来館者さえ増えればいい」との発想であるとの考え方です。

 筆者は別の考え方もあるだろうと思っています。札幌市民防災センターは、自らを地域の魅力を訴求する装置としても位置づけている、その魅力の確認として、地域外からも注目される施設であることを示そうとしているのではないでしょうか。

 地域外からの注目を経由することで地域内に「気づき」を与えるという仕掛けは、地域キャラクターや地域の「食」においても行われていることです。岐阜市柳ケ瀬の商店街キャラクター「やなな」がテレビ出演をきっかけに商店街で認知が進んだことや、B級グルメと呼ばれる多くの「食」がB-1グランプリなどのイベントによって地域内でも存在を再確認された例もあります。

 札幌市民防災センターは、このようにして獲得した市民の興味についても、注意深く育てる取り組みを行っています。札幌市民防災センターでは、来館者が一定の災害や防災体験を行うことで「認定証」をもらうことができます。認定証付与にあたって年齢や住所などのプロフィルを許諾を得たうえでうかがっています。どのような顧客層がいつ来館しているのかを分析することで来館に向けての次の広報に活かすことが考えられています。

 市民の来館に向けての広報にあたっては、分析も活用し、年ごとにターゲットとなる層を変化させることも行っています。毎年、館内のコンテンツを大幅に変えることは簡単なことではありません。同じ人々に来館を促しても、コンテンツに新鮮味がなければリピーターとなってくれることは困難です。年ごとにターゲット層を変えていく取り組みには教えられるものがあります。

 札幌市民防災センターは、管理運営を委託している財団法人札幌市防災協会との協力により、魅力ある施設づくりや、購入したくなる物品の販売も進めています。今後の、さらなる充実に向けて、10年間程度を目処とした長期計画の策定も検討されています。

 国や地方において行政や独立行政法人が行っている仕事を評価する「事業仕分け」が進められています。国の事業仕分けでは、陸上自衛隊広報センター「りっくんランド」については民間委託、JAXA(宇宙航空研究開発機構)の運営する広報施設JAXAiについて廃止との結論が出されました。防災広報施設もこれらと無縁ではないと考えます。

 あらためて、防災広報施設の意義について考えてみましょう。防災広報施設の最も重要なミッションとは何でしょうか。それは、住民の防災意識を育て、平常時及び災害時に自らや家族、地域の人々の命と暮らしを守る行動を起こすように啓発することだと考えます。防災についての意識変容と行動変容を促すことが、防災広報施設の役割です。防災広報施設を評価するにあたって来館者数が基礎としての意味を持つことは認めるとして、真に評価すべきは、防災広報施設が住民の意識変容、行動変容を促しているのかという点にあります。

 ひめじ防災プラザでの聞き取りにおいて、来館者と非来館者の間での住宅火災報知器の設置率の相違を調べることにも意味があるのではとの言葉を得ました。札幌市では児童の防災意識の変化を経年的に追跡調査することも考えているとの意見を聞くことができました。

 広報施設がなぜ必要なのか、どのようにして運営されることが望ましいのか、どんな評価が求められるのか。今後も考えていきたいと思っています。
  1. 2010/12/30(木) 18:51:00|
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河井孝仁

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