河井孝仁のシティプロモーション日記とか

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地域の魅力を創り、発信する-住めば愉快だ宇都宮 『広報会議』2010年5月号掲載

 宇都宮市のオリオン市民広場前に「宮カフェ」がある。1階にはマチナカこだわりマルシェ@miya、2階はレストランPetitePrairie。1階には、宇都宮で作られた、あるいは宇都宮に縁のある食品や雑貨がおしゃれに並ぶ。筆者が訪れた時にはマイタケの隣に「きのこいろいろ☆オススメ☆レシピ」と手書きの白文字で書かれた黒のサインボードが置かれ、イラストとともに「まいたけ入り揚げギョーザ」のレシピが記されていた。

 縦に長い店舗に入っていくとジャムやドレッシング。40代ぐらいの女性たちが「ここは、ものが買いやすい」と話しながら商品を選んでいる姿も見かけた。奥に深い店舗に多種の商品が並べられた店内はすれちがうにも気を遣う。逆にその狭い雰囲気が充実した感覚を生み、買い物の楽しさをつくる。木を基調にしたイメージの統一も商品だけ見れば雑然とするはずの店の印象を括っている。

 2階は地元の食材を積極的に利用したレストラン。333種類のカクテルが用意され、ジャズライブも開かれるとのこと。宮カフェには月1万人の利用客がいる。

 宮カフェは商工会議所が運営するアンテナショップである。宇都宮市が設置、運営に対して資金支援を行っている。新聞によれば宇都宮市は改装費用等に2500万円を支出した。個別の店舗、レストランに理由もなく税を投入することはあり得ない。アンテナショップという位置づけが市予算の支出を可能とした。

 自治体が関与、支援するアンテナショップは多い。東京駅から近い北海道フーディスト八重洲店や東京・銀座のおいしい山形プラザなどは多くの来店客がある。地域の食材を用いたレストランもある。こうした取り組みは地域の魅力を発信することに役立っている。

 宮カフェもアンテナショップである。地域の魅力を発信するためのツールと考えられる。しかし、北海道フーディストなどとは明らかに異なっている。場所の違いである。宇都宮の魅力を発信する場所が市民が買い回る商店街のなかにある。

 宮カフェの1階から2階にかけての、塗り跡をわざと目立たせた白い壁。オレンジの地に白い文字の大きなバナーが掛かっている。「住めば愉快だ宇都宮」。宮カフェは市民に向けて地域のプライドを発信する機能を担っている。

 宮カフェが面した通りには縦長のバナーが並ぶ。宇都宮についての思いを書いたボードを持った宇都宮に関わる人々の写真。「夢や希望が実現する街」などの文字が読める。世界最高峰のプロバスケットリーグNBAでプレーし、現在、地元プロチーム「リンク栃木ブレックス」で活躍する田臥勇太選手もいる。そうした写真と交互に「住めば愉快だ宇都宮」のロゴバナーが見える。

 宇都宮は餃子のまちとして知られる。それに加え、カクテルのまち、ジャズのまちとしても訴求を始めている。著名なバーテンダーやジャズ演奏者の出身地であることを活用し、地域イメージを形成しようとしている。宇都宮駅前にはジャズ奏者とカクテルグラスと餃子の写真をあしらった広告塔もある。市役所では金曜日の昼休み限定とはいえジャズのBGMが流れていた。

 多くの自治体で地域の魅力を発信する試みが行われている。宇都宮の餃子のまち、ジャズのまち、カクテルのまちという発信も同様である。しかし、餃子とジャズとカクテルの組み合わせは異種格闘技を感じさせる。ジャズとカクテルの結びつきはともかく、いずれも餃子と重なる部分はほとんどない。また、郊外に暮らす人々にとってカクテルと日常がつながることはない。地域魅力の発信を行おうとする自治体にとって、こうしたイメージの散乱に悩むことは珍しくない。

 大都市のように多様なエンターテイメントが分厚く存在しているわけでもない。小規模な自治体のようにひとつの産品や景観を押し出すことでは市民の納得を得られない。一方で複数のイメージを提示しては焦点がぼけてしまう。そうした中規模の自治体にとって宇都宮市の事例は重要な先達になる。

 地域内の人々に自分たちの暮らす地域のイメージを集約、編集して提示する。宇都宮市ではその集約点、着地点が「住めば愉快だ宇都宮」になる。餃子のまちを、ジャズを、カクテルのまちを話す時も、着地点として「住めば愉快だ宇都宮」を置く。宮カフェの存在が後押しする。着地点の存在が自らのまちへの認知を明確にし、興味を持たせる。それによって地域外へのスムーズな訴求も可能となる。

 住めば愉快なまちは宇都宮だけではない。「住めば愉快だ宇都宮」が宇都宮を差別化できる方法はどこにあるのか。「早い者勝ち」と「継続的な補強」が鍵になる。住めば愉快なまちは他にもある。だが、宇都宮が最初に掲げ、イメージ形成に成功するなら、他地域のキャッチアップは困難になる。民間企業の例を挙げる。シャープの新しいコピー「目指している、未来が違う」。他企業も各々に違う未来を目指しているとしても、最初に提示したシャープにとっては差別化が可能となる。

 次に、着地点が常に補強される必要がある。まず、なぜ「住めば愉快だ宇都宮」なのかを明らかにしなければならない。餃子、カクテル、ジャズがもたらす楽しさがあるだけではなく、災害の少なさ、交通の便、そのまま飲める水道水、都市と農村部の共存…などの利点を説明、共有可能にする。宮カフェの豊かな地元商品も意味を持つ。これらが「宇都宮は住みやすい」という納得を作る。メディアを用いた補強も行われる。例えば「宇都宮愉快CM」がある。愉快CMは、粉チーズの容器をカクテルのように振る「パスタに粉チーズ」、ランドセルの小学生がトランペットを吹きながら登校する「Jazz Boy」、さらに「ウェディングギョーザ」の3篇がYouTubeにアップロードされている。

 新しい素材を加えることで集約点を補強することも有効になる。宇都宮は比較的平坦であり自転車が走りやすい、それに加え宇都宮ブリッツェンという自転車プロチームを持つ。国際規模の自転車レースも市内で開催される。プロスポーツの愉快さ、自動車ではなく自転車というエコロジー志向。いずれも住めば愉快だ宇都宮を補強する素材となる。こうして築かれる「自転車のまち」という新しいイメージを「住めば愉快だ宇都宮」に着地させ、集約することで地域イメージの分散を回避し、むしろ豊かにすることができる

 宇都宮市が進める地域の魅力を創り、発信する仕組みを紹介してきた。まだ重要なことが残っている。次号では、この魅力発信の仕組みへの市民・顧客参画について考えていくことにしよう。
  1. 2010/12/30(木) 18:37:15|
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河井孝仁

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