河井孝仁のシティプロモーション日記とか

静岡県生涯学習審議会WG

静岡県生涯学習審議会のワーキンググループで、『ニートって言うな』の本田由紀助教授を迎えて、お話を伺った。
本田氏の言う、現在のニート論の問題点については、よく理解できた。
いたずらにニートを拡大解釈し、病理的に考察することのダメさ、典型労働層と非典型労働層の格差固定化・再生産という解決すべき課題、労働力需要側の企業にこそ先んじての対策が必要なことなど。

そのうえで、学校現場としてどのように職業に就くことへの教育を進めていくかについて、本田氏は実業高校への期待を述べる。さらに、企業の採用基準としての「行動力・実行力 熱意・意欲 コミュニケーション能力」という抽象性が求職者の断念を生むと指摘された。

この点について私から以下の質問を行った。

5000人以上規模の企業の採用基準が「行動力・実行力 熱意・意欲 コミュニケーション能力」が50%を超え、20%に満たない専門的知識・技能に比較して極めて多くなっている(厚生労働省「雇用管理調査」2004)

こうした企業の採用基準の抽象性について、本多氏は否定的な御意見だったが

この調査結果は、企業側が中途半端で、かつ応用範囲の狭い「専門性」は不要と考え、急激に変化する状況が予想されるなかで、それに対応し、あるいはリードする人材を必要としていると解釈することができるとすれば

また、大企業に社員として採用されるのではなく、みずから、起業し、中小企業をリードすることが今後は一般化するとすれば

学校教育では職業的専門性を養うこと以上に行動力・実行力 熱意・意欲 コミュニケーション能力を可能な限り客観化しつつ、育てることが必要なのではないか

あわせて、その客観化された基準を企業と共有することが重要なのではないか

本多氏は、職業的意義をもった教育の必要性について強調されたが、これは(水産高校の事例などをうかがうと)行動力・実行力 熱意・意欲 コミュニケーション能力が職業的意義をもった教育のなかで養われることを述べているのあり、狭い職業的専門性を養う教育を進捗すべきと言っているのではないのではないか。

この質問に対し本田氏からは
「それらの行動力・実行力 熱意・意欲 コミュニケーション能力を客観すること自体が極めて困難であり、その抽象的な部分が企業の恣意にとっての逃げ道になるのではないか。職業的意義のある教育とは、狭い範囲での専門性であっても、そこからの自信が将来的に意味を持つ という迂回的議論を行っている。」(文責:河井)との答をいただいた。

流れとしては、私の質問に対して否定的な印象での回答であったように思うが、中身としては、共通する部分もあるのではないか。
確かに「客観化」の困難さはあるが、それは、本田氏が否定的に述べられた「人間力」などという形での基準ではなく、まさに、評価される者がどれほどに「つくりあげること」に関わったのか という部分でのそれぞれの能力の客観化でありうると考えれば。

さらに、本田氏の言う、実業高校が具体的に「つくりあげる」ことを教育の目標、手段とすることにより、迂回的に「行動力・実行力 熱意・意欲 コミュニケーション能力」を育てることにつながるとの言葉を勘案すれば、共通部分がとても多いのではないかと期待したい。

この点については、例えば東海大学広報メディア学科が、受け身の授業に終始する場ではなく、多様に「つくりあげる」教育、学習の場であることも思い起こされる。

審議会WG後、委員のH氏と夕食を取りつつ、さらに議論した。
H氏の造詣の深い意見、特にグローバル化を前提とした上で、日本での就労に向けた教育の意味に関わる意見については、とても触発されるものがあった。

なかでも、ジャパニーズクールを当然のものとして備えた若者は、グローバルで考えれば、それだけで既に優位を持っていることを認識し、例えば、それらの<能力>評価基準のデジュールスタンダード化を、日本が主導的に行うことで、日本の若者の求職への優位性をつくれるのではないかという意見交換は興味深かった。

  1. 2006/08/18(金) 23:26:20|
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河井孝仁

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